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 月日が過ぎて、エミリオは寄宿学校へ入学した。  長期休暇になると、寄宿学校の生徒は帰宅組と、家の都合で帰れない残留組に別れる。入学して三月後の冬季休暇、エミリオは兄と共に帰郷した。  屋敷の門前で、アリエッタは雪掻きをしていた。たった三ヶ月離れていただけだというのに、柔らかな赤毛を編んで纏め、地味な使用人服に身を包んだアリエッタが、エミリオには少し大人びて見えた。 「ウルバーノ様、エミリオ坊ちゃん、おかえりなさい」  はにかむような笑顔を向けられて、エミリオはびくりと身を強張らせた。だが、アリエッタの笑顔が向けられた先が後ろに立つ兄なのだと思い至ると、途端に腹立たしくなり、エミリオは足元に積もる雪を思い切り蹴り飛ばした。 「わぷっ」  頭から雪を被り、アリエッタが身を縮こまらせる。頭と肩にかかった雪を手で払うと、翠色の瞳を丸くして、アリエッタは呆然とエミリオに目を向けた。 「なんだよ。文句あるのか?」  ぶっきらぼうにそう告げると、エミリオはずかずかと家に入った。少しやりすぎたかと気になって振り返ると、門前で雪掻きを再開したアリエッタの肩に、兄が上着を掛けてやっているのが見えた。
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