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「おまえ、本当に使えねーな!」
床に転がったチェンバーポットとぺたりと座り込む部屋女中を蔑んだ目で見下ろして、エミリオは小憎らしい笑顔で吐き捨てた。
チェンバーポットの陰からうねうねと這う蚯蚓が姿を現わすと、赤毛の部屋女中は悲鳴をあげて後退った。指先で蚯蚓をつまみあげ、少女のほうにぽいと投げやれば、少女はさらに悲鳴をあげて逃げ惑う。
堪らない。愉快で堪らない。
エミリオが嗜虐的にほくそ笑んでいると、けたたましく部屋の扉がノックされ、寸分後に兄のウルバーノが扉を開けた。逃げ惑う赤毛の女中の手首を掴み、部屋の中を一瞥すると、彼はまだ笑い続けているエミリオを見て、やれやれと肩を竦めた。
「エミリオ、いい加減にしろ」
「わかってるよ」
諌めるような兄の声に、戯けた顔をして見せる。
なんということはない。この騒動は、単なるいつもの悪戯だった。
「お前、なんでいつもこんなことしてんの」
「別にどうだっていいだろ。アリエッタは俺のなんだから」
困ったように呟く兄に向かって咄嗟にエミリオが口にしたのは、そんな言葉だった。
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