赤尻トナカイ…冬の陣

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整備されたソリがきれいに並べられた庭に出ると、 トナカイ達の人垣の中で、エコがうずくまっていた。 「どうしたの!? エコ!」 「……準備運動にちょっと走ってたら、ソリにつまずいて……」 「転んで挫いたんだよ、この馬鹿女は! 折れてないとは思うがね……」 口調は厳しいけど、キリさんの目は心配そうだ。 湿布を巻いたエコの右脚に、副え木をしてる。 「はぁ~……どうするか。今年は男も女も本当に人数ギリギリだからね」 溜め息混じりのキリさんの言葉に、みな、顔を見合わせて黙り込んでしまった。 トナカイの男は、冬には角が抜ける。 女は冬に角が生える。 だからサンタのソリは、角のある二人の女のトナカイを先頭に、 後ろを男達がサポートして走るんだ。 角のない男には、女の代わりはできないし、 そもそも今年は男もギリギリだし。 エコの手当てを終えたキリさんは、きっ、と顔を上げた。 「ルカ、走れるかい?」 「えっ!! あたし!? 怪我はもう大丈夫だから走りたいけど、でも……」 ルカは困惑顔。 だってルカは今、角が……両方、根元から砕けてしまってる。 ひと月前に、時告げ鳥のカホを助けようとして、頭から樹に突っ込んだから。
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