11人が本棚に入れています
本棚に追加
整備されたソリがきれいに並べられた庭に出ると、
トナカイ達の人垣の中で、エコがうずくまっていた。
「どうしたの!? エコ!」
「……準備運動にちょっと走ってたら、ソリにつまずいて……」
「転んで挫いたんだよ、この馬鹿女は!
折れてないとは思うがね……」
口調は厳しいけど、キリさんの目は心配そうだ。
湿布を巻いたエコの右脚に、副え木をしてる。
「はぁ~……どうするか。今年は男も女も本当に人数ギリギリだからね」
溜め息混じりのキリさんの言葉に、みな、顔を見合わせて黙り込んでしまった。
トナカイの男は、冬には角が抜ける。
女は冬に角が生える。
だからサンタのソリは、角のある二人の女のトナカイを先頭に、
後ろを男達がサポートして走るんだ。
角のない男には、女の代わりはできないし、
そもそも今年は男もギリギリだし。
エコの手当てを終えたキリさんは、きっ、と顔を上げた。
「ルカ、走れるかい?」
「えっ!! あたし!?
怪我はもう大丈夫だから走りたいけど、でも……」
ルカは困惑顔。
だってルカは今、角が……両方、根元から砕けてしまってる。
ひと月前に、時告げ鳥のカホを助けようとして、頭から樹に突っ込んだから。
最初のコメントを投稿しよう!