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「カズ!」
「え! なに?」
「お前の角の帽子、今日だけルカにかぶせてやんな」
「え! あたいの帽子を!?」
トナカイになりたくて、なれなくて。
手先だけは器用だから、
抜けた角をもらって、自分でひと月かけて作った角の帽子。
ずっと肌身離さずにかぶっていた、あたいの一部。
でも…でも、サンタの里の一大事だもん、あたい、一肌脱ぐよ!!
覚悟を決めて、深呼吸した。
冬の朝の空気が喉を刺して、ほんのちょっと、涙が滲んだけど。
何年かぶりに帽子を脱ぐ。
頭がスースーと寒かった。
「ルカ、かぶってみて」
「カズ……いいの?」
「あったりまえじゃん!
子供達がみんな、サンタのソリを待ってんだから!」
砕けた角の痕がまだ痛々しいルカの頭に、あたいは脱いだばかりの自分の帽子をかぶせた。
……けど、入らない!
「痛っ!! 痛いわ、カズ!
そんなに押し込まないで!!」
「でも、しっかり固定しないと、走ってる途中で脱げちゃうよ!」
「無理、小さすぎて痛い!
あたしには入らないわ、その帽子」
「ルカの頭に合わせて、新しいのを作ることは……できないかい、カズ」
「無理だよキリさん!
ひと月かかったんだよ、これ作るの。
今夜までなんて、絶対無理!」
「……だろうね」
また溜め息をつくキリさんに向かって、
それまで俯いていたルカが、顔を上げた。
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