サンタの里の 秋と冬

赤尻トナカイ…秋の恋

え？ あたい？

あたいは、カズ。お尻は赤いけど、トナカイ。

………だったら良かったんだけど、この里で拾われた猿、なんだ。

日本のサンタの総元締めの、キリさんトコにお世話になってる。

物心ついた頃からトナカイ達と一緒に育ってきた。
自分はトナカイだ、って、ずっと思ってたのに、

違ったんだ。

気づいたのはいつだったかな。

みんなたくましく成長して、立派な角が生えて。

そしてクリスマスの晴れ舞台に、ソリを曳く。

あたいはみすぼらしくて小さなまんまで。

角も生えなくて。

手先だけ器用になって。

あたいもソリを曳きたいって、ずっと、ずっと思ってた。

だから、角のついた帽子を、いつもいつも、片時も離さずにかぶってるんだよ！

でも猿に出番なんかないんだ。

あたいにできるのは、せめてサンタと一緒にプレゼント配ったり、
配った先で宴会芸やったり、それくらい。

そりゃあ、ドジョウすくいの芸なら誰にも負けないよ！

子供達だって、みんなみんな笑顔で誉めてくれる。

だけど、……だけどね。

あたいが本当にやりたいのは、トナカイになってソリを曳くことなんだ。

雪を蹴って、空を蹴って、
月明かりに鈴の音を響かせて、

走ることなんだ。