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「ほっほっほっ!
そうかね、甘えついでに、ちょっと私も甘えさせてもらうかね」
トキさんが、やおら背をしゃんと伸ばして声を放った。
「カホ! こっちにおいで!」
「え! 僕!?」
庭の端っこでルカを心配げに見つめていたカホが、素っ頓狂な声を上げた。
「カズがソリ曳きで忙しいようだからね。カズと一緒に行って、ドジョウすくいを手伝ってやっておくれね」
「え、でも僕、全然踊ったことないです」
「ほっほっほっ!
カズの踊る後ろを、くっついて歩くだけで充分だがね。
鶏の歩く姿はね、ドジョウすくいの歩く姿とそっくりだからね、おっほっほっ!」
珍しく高笑いするトキさんを、キリさんが苦い顔で制止する。
「トキさん!」
「なんだね? カズのドジョウすくいにカホが加わったら、子供達はさぞかし喜ぶだろうね。んー?
何か問題があるかね、キリ」
「……まったく。
敵いませんよ、トキさんには。
ほらカホ、ソリに乗んな!
疲れたからって明朝の時告げをサボったら承知しないよ!」
「はい!」
ルカの出陣を知って朝からずっと心配していたカホは、嬉しそうにソリに跳び乗った。
「ほっほっほっ!
どれ、初心者どもに良い事を教えようかね」
トキさんは、ルカの背中にチョン、と飛び移った。
「サンタのソリがなぜクリスマスにだけ飛べるか、わかるかね」
「え? そういえば、考えたことなかった」
「この庭は、子供達の夢の集まる場所だね。
子供達の一年分の夢が、ソリと、それにつながるものを空に押し上げる。
子供達の夢を共有するから、その夢に守られて、飛べるんだ。
覚えておくと良いね」
トキさんはそれだけ言うと、またキリさんの肩に飛び戻った。
「さあて、出陣の時間だね、キリ」
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