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キリさんとトキさんの姿が、雪の壁の上に現れる。
号令をかけるキリさんは、この夜だけは、とても神々しくて綺麗に見えるんだよ!
言うと怒らせるから、誰も言わないけどね。
「さあみんな、行っといで!
子供達の年に一回の夢、反故にするんじゃないよ!」
たくさんのソリが夜空に、次々と数珠つなぎになって駆け上がっていく。
今夜は晴れ。
大きなお月さまに向かって駆けるトナカイとソリの列は、
今まで見てきた中で一番綺麗で、そして誇らしく見えたんだよ。
「キキ、ルカ、さあ行こう!」
サンタのシチさんの声が聞こえて、
ぼーっと空を見上げてたあたいは、慌ててもう一度しっかりと、ルカの首にしがみついた。
ゆっくりと、あたい達のソリが浮く。
キキとルカが、視線を交わして、地面を蹴る。
ふわり。
周りの空気全体が、持ち上がる。
視界いっぱいに、お月さまが映る。
「わぁ……」
今まで何度もソリで飛んでいるのに、
先頭で見る夜空は、これまでとは全然違って、
すごく、すごく、美しかったんだよ。
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