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「地面を走るのと全然違うわ! 本当に、足許から力が湧いてくるみたい!」
ルカの声が、興奮してる。
「そうでしょ! 一度これを味わったら、サンタのソリ曳きはやめられないわよ」
キキが弾んだ声で返した。
「俺は力が抜けそうなんだけど。
目の前がカズの真っ赤な尻でいっぱいで」
ユウが笑う。
「え……しょうがないじゃん、エッチ! 見るな!」
「俺の目線だとちょうど目に入るんだよ」
「ユウは背が低くなるようにお願いしたら? サンタに」
シユが茶化す。
ソリはどんどん上昇していく。
さあ、目的地に向かって方向転換だ。
スムーズに旋回したソリに、サンタのシチさんが感心した声を上げた。
「ルカの走りは、本当に綺麗でなめらかだな」
「あら、私は?」
キキが不服そうにシチさんを振り返る。
「いや、馬力ならキキが一番だよ、キキが。ははは。……おおっと!!」
急にソリが、ガクン、と傾いた。
「いかんいかん、みんな集中だ!
子供達の夢と一緒に、走るぞ」
シチさんの声に、みなの背筋がピンと伸びる。
そして、ふわりと、何か暖かくて力強いものに包まれて、
あたい達は幸せな気持ちでイブの夜空を走ったんだよ。
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