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里の庭の灯りが見えてきた。
東の空が白む。
「本当に遅くなったな、時告げの時間ギリギリだ。
カホ、徹夜明けだがよろしく頼むよ」
シチさんが、すまなそうに言うと、カホは笑って答えた。
「大丈夫です。僕、今すごく気分がいいし、むしろ、すごくすごく歌いたい」
朝一番の光がソリを照らして、
カホが首を上げる。
「こーけこっこーーーっ」
次第に大きく見えてきた庭には、今年の仕事を終えたソリが、静かに並んでいる。
「こーけこっこーーーっ」
バサッ。
「えっ? カホ!」
カホは、ソリの縁を蹴って、
羽ばたいていた。
緩やかな羽ばたきのまま、下から何かに支えられてるみたいに風に乗って、
カホはスイッとルカの傍らに寄る。
「こーけこっこーーーっ」
ルカが、広げたカホの翼を驚いた顔で見つめて、
そしてすぐに満面の笑顔で、流れるように走る。
「こーけこっこーーーっ」
明けの空からの深い時告げの声は、きっときっと、
隣の里まで響いたと思うんだ。
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