赤尻トナカイ…冬の陣

15/16
前へ
/39ページ
次へ
里の庭の灯りが見えてきた。 東の空が白む。 「本当に遅くなったな、時告げの時間ギリギリだ。 カホ、徹夜明けだがよろしく頼むよ」 シチさんが、すまなそうに言うと、カホは笑って答えた。 「大丈夫です。僕、今すごく気分がいいし、むしろ、すごくすごく歌いたい」 朝一番の光がソリを照らして、 カホが首を上げる。 「こーけこっこーーーっ」 次第に大きく見えてきた庭には、今年の仕事を終えたソリが、静かに並んでいる。 「こーけこっこーーーっ」 バサッ。 「えっ? カホ!」 カホは、ソリの縁を蹴って、 羽ばたいていた。 緩やかな羽ばたきのまま、下から何かに支えられてるみたいに風に乗って、 カホはスイッとルカの傍らに寄る。 「こーけこっこーーーっ」 ルカが、広げたカホの翼を驚いた顔で見つめて、 そしてすぐに満面の笑顔で、流れるように走る。 「こーけこっこーーーっ」 明けの空からの深い時告げの声は、きっときっと、 隣の里まで響いたと思うんだ。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加