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やって来た新入りのトナカイは、女の人。
「今年はねぇ、サリもレミもマリもモネもミーもリコもミユもカカもサチも、みぃんな子育て真っ最中でね。
ソリを曳く人員が足りないから、助かるよ」
キリさんはそう言って、機嫌良く出迎えた。
その背に乗って、立派な鶏冠の雄鶏。
今までこの里にはいなかった、時告げ鳥だ。
何で青い服を着てるんだろう。真っ白な羽だけのほうが、真っ赤な鶏冠が映えて、綺麗なのに。
「こんにちは!
あたいはカズだよ。あんた達の寝床はこっち。案内するよ」
「ありがとう。あたしはルカっていいます。カズさんの角、立派ね~、あたしも負けてられないわ! よろしくね」
トナカイは茶目っ気たっぷりに自己紹介してくれたけど、ニワトリは仏頂面で挨拶さえ返してくれない。
ルカが慌てて付け加える。
「この時告げ鳥は、カホっていいます。
カホ、ほら黙ってないで挨拶して」
「……よろしく」
「もう。キリさんカズさん、すみません、カホったら人見知りで……」
ルカとカホは同じ里で生まれて、ずっと一緒に育ったんだって。
カホはちょっと変わってるから、なかなか友達もできなくて、
ルカがいつも面倒見てきたんだって。
ルカがサンタの里のトナカイに抜擢されて引っ越すことになったから、
元の里ではカホの面倒を見きれない、って、カホも一緒に引き取ってくれるなら、ってことで、交渉が成立したんだって。
「僕は厄介者だから」
ルカの背で、そっぽを向いたまま、ぽつりと呟いたカホの言葉に、
あたいはなぜだか胸がちくん、と痛んだんだ。
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