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それでもカホは、時告げの声と一緒に、毎朝飛ぼうとし続けた。
ご飯がもらえなくても、関係なく。
ルカがこっそり、自分のご飯を分けてあげてるのを見かけたけど、あたいは知らんぷりすることにした。
「いい声なのに、あれじゃ逆にあたし達が睡眠不足になっちまうよ。
ソリの部品も痛んじまう。
困ったもんだ」
キリさんは呆れて、カホを金網の小屋に押し込んだ。
「こーけこっこーーーっ」
バサバサっ!!
ガチャン!!
「こーけこっこーーーっ」
バサバサっ!!
ガチャン!!
狭い小屋の中で、それでも毎朝、カホは飛ぼうとする。
羽も鶏冠も、金網にぶつかって、もう傷だらけなのに。
あたいはたまらなくなって、尋ねた。
「カホ、何でそんなに飛びたいの?
そんなことしてたら、そのうち綺麗な声まで出なくなっちゃうよ」
「声なんか要らない。
僕は飛びたいんだ。
風に乗って、青い空に吸い込まれて。
それができなきゃ、他に何ができてもダメなんだ!!」
あたいは、心臓をぎゅうっと掴まれたような気がした。
カホは、あたいと同じだ。
トナカイになりたくて、なれなくて。そんなあたいと同じなんだ。
いいや、違う。カホはあきらめてないんだ。
厄介者になりたくなくて、角の帽子だけかぶってあきらめてる、あたいとは違うんだ。
「……カホ、その青い服は、空の色?」
「そうさ。いつかこの服を、空に溶け込ませるんだ、僕は」
「……うん。そうだね。きっとできるよ!
あたい、協力する!」
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