逸話の中の童

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記されていない目録を開くように、 記憶の泡沫の真新しさが 突き始めては消えた。 一つを切り取れば、 何て他愛のないことだろう。 なのに、 彼女たちの事を思うだけで、 胸がいっぱいになる。 なにも考えることが 叶わなくなる。 覚えきれない記憶が流れ込み、 臨界を越えたように、 記憶が溢れるように、 形のないものに変わって、 涙が頬を伝っていく。 声を出そうとした。 だがそれは嗚咽の声を響かすだけで、 空気を震わすには、 足りなすぎたのだ。
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