1人が本棚に入れています
本棚に追加
何から話そう
記憶のない頭を
巡らせて
幾度となく、
毎日のように
もう過ぎてしまった
膨大な時間を置いて、
今こそ話そうと声を出す。
話せば話そうとする程に、
涙はこぼれ、頬は朱り、
問いかけることもままならず、
やっと声に出たのは、
「あのね…あのね…」
口に出来るのはそれだけ
しゃくりあげながら
涙でぐしゃぐしゃにしながら
真っ白な世界はその声を拾い上げ、
なにもない世界を色づける。
彼女の視界のなかだけの世界を、
一人よがりの空間だけを、
戻る記憶は心という歯車を働きかける。
その時、彼女は生きていた。
相対する二人の男女は、
感情を顕にはしなかった。
最初のコメントを投稿しよう!