逸話の中の童

10/13
前へ
/18ページ
次へ
目の前の二人はただ瞳だけを 彼女に向けて立っている その瞳は枯渇し、 肩を震わすだけだった。 肩を震わすだけだった 瞳からはなにも感じない なのに、 無言によって語りかけるように 少女は初めて味わう感情を、 二人からの実感だけを、 噛み締めるようにそこにいた。 まっ更な感情を、 ただ単純な感情だけを、 溢れる言葉は、 口から出ずに、 ただ頬を湿らせて、 一時の張り裂けるような喜びに 彼女を浸らせていた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加