1人が本棚に入れています
本棚に追加
そして一生を猫の姿のままで生きた。
そして猫は骨になり木の下で息絶えた。
その体は木の糧となり、
血肉になった。
魂は消えども、残り残った情念だけが、
その木に宿った。
もう一度戻れるならと、
伝えられない我が身を省みず、
恥にも願いすがり付き、
猫は戻る。
だけどそれは木の姿
風に靡くことしかその身は知らず、
泣く声も、ざわめきに掻き消える。
あるときその木は、
火に燃えた。
雨が降り、雷鳴轟き、
木に打ち付ける。
生きた身と、
震える心が、
泡を作る。
そうして木は昇っていく。
望みを抱えたままに、
そしていつしか、
その木は形をとった。
最初のコメントを投稿しよう!