逸話の中の童

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私が身に付けていたのは、 夏物の白いワンピースに麦わら帽子 純白の世界に不純は同化することもなく、 ワンピースは自分の白に染まっていた。 まるで散歩に行くみたいと 小さな声で呟いた。 そしてもう一つだけ、 私を知った。 本があった。 革作りの小さな本。 本をめくる。 私の冷たい掌が、 乾いた紙を触った。 頁の薄い紙が次から次へと流れる。 スーっと全部めくっていても なにも見えない。 真っ白だった。 なにも書いていなかった。 私のいるこの世界と同じように、 なにも写っていない本を閉じ、 なにも記されることの無い真っ白に目を閉じ、 私は歩くことにした。 知っているものを探すために、
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