逸話の中の童

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それは下からシャボン玉のように 浮き上がるいくつかの泡だった。 私はゆっくりと眺め、 用心深く 周りを歩くと、 泡が一つパチンと割れた。 そしてそれを皮切りにして、 次々と泡が割れる。 そして泡の割れた分子が 集まり音もなく弾けた。 無色透明の花火のようだった。 シャボン玉は私を驚かすには充分で 私はとっさに顔を手で隠して、 下をうつむく。 補助がなくなった本が 手からパサリと落ちて、 頁を開いたまま落ちた。 耳を澄まして、 無音を聞いて、 なにもないのを安心しながら、 下に向けた視線を戻そうと、 そろりそろりと手を外す。 小さな足がそこには見えて、 視線をあげると、 そこには一人の子供がいた。
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