逸話の中の童

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私が椅子に座っていた。 目の前の光景は、 色があった。 真っ白でなにもない世界とは なにもかもが違うもの そして目の前には人がいた。 一人、二人 二人そこには人がいた。 薄く靄が架かってて、 なにも見ることは出来ないけれど、 二人はわたしの方を見て、 辛うじて見える口角を、 緩やかにあげる姿を、 確かにこの目で見ていた。 声が出ない。 今すぐ声をかけたいのに、 わたしの喉は震わすことをやめていた。 私と知らない二人が 朝の待ったりとした時間を、 過ごしていた。 私は一人じゃない。 あぁ、 何て言ったんだろう。 私のいた時間に、 私は何を示したのだろう。 名前は忘れた でもわかる。 そうだ あれは…… 欠け替えのない 言葉に私は飛び込む。 文の紙の羅列に、 私は刻んだ。 それは、 数文字の 寒々しいほどの、 絵空事。
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