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ザイードがハダバの集落から邸へ向かう途中の土産屋で、愛美に試着させた薄い紫色のベール。
一枚の反物であったそれが仕立てられてしっかりと形になって戻ってきていた。
「マナミ様に合わせていた物だと思い、代わりにお渡ししようと──…しかし、あまりのターミル殿の余興の愉しさでつい渡しそびれてしまいました──…申し訳ない」
アレフはザイードの代わりに役目を果たせなかったことをその場で詫びた。
「いや……別に構わん」
手にしたベールを見つめるとザイードはそれに顔を埋める──
アレフはその姿を見届けて居室を出て行った。
ザイードは柔らかなベールの感触に愛美を重ねた。
自分のペットとして可愛がっていたついでに気紛れで買ってやった品だ──
「──…っ」
だがそう思いながらもザイードはそれを握り締めたまま切なく顔を歪めていた。
生地を被せてやった愛美の瞳を思い出した──
濡れた瞳で見つめてくるその眼差しに、
一瞬気持ちが昂った──
今でもあの時のことは憶えている。
胸が騒ぎ、いてもたっても居られず邸についた途端に愛美を湯船に連れ込みがむしゃらに抱いた……
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