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「マナミ!」
「──…セナっ、アーキルもどうしたのっ」
城の見学を終えてアサドの邸に着いた愛美を仲の良かった二人が迎えていた。
「アレフ様に頼まれてお渡しする物があったの。そしたらマナミの送別会をするから二人で来なさいって誘って頂いて──」
「………」
愛美は二人の顔を見て喉の奥を詰まらせた。
なんだろう──
これは何かの策略なのだろうか──
居間の奥ではここを発つ前にもう一度来ると言っていたターミルが何やら上半身裸でスタンバイして居る。
一体何をする気で居るのだろうか?
疑問を浮かべた愛美の手を牽くとセナは準備された食卓に腰掛けさせた。
斜め向かいにはもうアレフが座っている。
アサドは愛美の隣の席に腰を下ろした。
「ターミルはまたやる気かアレを」
「そのようですな……」
何やら気合いを入れて軽い準備体操をするターミルを眺めアサドは、んっ!?──と目を止めた。
「一体何を手に持ってる?」
「サボテンでございます──」
「サボテンっ!?」
「ここは砂漠の集落と違いますから剣で柱を傷付けてはならんと庭から手頃な物を拝借しておりました」
「庭の物を抜いたってことか──」
「そうとも申します…」
「───…」
アサドは無言だった。
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