16章 帰国の渡

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・ 思わずヘラリと崩れた口元をザイードは手のひらで覆い隠す── ザイードは微かに頬を緩め、少々困惑した表情を浮かべると愛美を見つめた。 「酒でも飲んだか?…」 愛美はその問い掛けに首を横にふる。上目使いで見つめる仕草。両腕はザイードの首に抱き付くように回ったままだ。 ザイードは視線を少し游がせた── 「これがお前の素か……」 愛美を見つめて赤い顔を返す。どこかしら、ヤラレタ──そんな表情を見せるとザイードはふっと笑って愛美を思いきり抱き締めていた。 「アヘンなんか要らないな……」 「アヘン?」 「なんでもない……お前には媚薬なんか必要ない……」 「……?…きゃっ」 ザイードは愛美の問い掛けをはぐらかしながら愛美の躰をぐっと押し開いた── 「激しいのが好きか──…今までの“イヤイヤ”は全部反対の意味だったんだな…なるほど」 「えっ!?」 焦った顔を見せる愛美の顎を鷲掴むとザイードは自分に向けて覗き込んでいた。 「ちょうど良かった──…気持ちを抑えるのに苦労してたとこだ──…なんだ、激しいのが好きなら早くそう言え……」 「───…」 ふっと口端に浮かべた笑みと何かを含んだ眼差しが愛美を射抜く──
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