16章 帰国の渡

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・ ザイードの体が大きな波を起こすように揺れ始める。それに合わせて愛美の唇から漏れる呼吸も途切れ途切れに切なく震えている。 「───…っ……マナミっ…」 「ああっ…いっ…い、……」 愛美の中が一段と腫れて強い圧を掛ける── 激しい動きは一定のリズムを刻みザイードは絡み付く愛美のその中で猛りを硬く突っ張らせた── 「───…っ…!」 腰を浮かせた愛美を強く抱き締めて胸に顔を埋める。 愛美は目が離せなかった── その背中から差す夕陽の射光がザイードを神々しく見せている── 民が崇めたがるのが何となくわかる気がする── この人はこの国の王になる人だ…… 夕陽の射光が眩しすぎるせいか愛美の瞳から自然と涙が溢れていた。 辛いとか嬉しいとか… そんな感情でもない涙。 愛美はただただ高尚なザイードのその姿に崇拝の涙を静かに溢れさせていた。 「───御約束通りで御座いますな」 ターミルは、ふむっと一声漏らすとザイードを見つめてそう口にしていた。 「仕方あるまい──…先にするべきことを済ませる…それが俺にとってもマナミにとってもいい方法だ──」 ザイードはそう言いながらも口惜しげな眼差しを愛美に向けた。
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