第一章 1

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「どうやって口説いたの?」  西山の開口一番はそんなものだった。 「友達になろうぜって言っただけだって。何回聞いたら納得するんだ、テメエは。てか、近い。うぜえ」  頬っぺたが変形する位、力を込めて押すのに、西山は引き下がろうとしない。  ホームルーム前、向井が俺達の輪に自分から入ってきた上に、そこから出て行こうとしなかったのだ。しかも、西山曰く、俺に対する向井の眼差しが熱っぽいと。 「噂だけど、抱き合っていたって本当? そんなの噂だよね? 噂の一人歩き。噂の一人泳ぎ」 「そうだよ、噂の一人走りだよ」 「噂は一人で走れないって噂、本当?」 「お前、結局俺を信じてねえってその口でちゃんと言ってみろや、ボケ」  パコパコと俺と西山の頭を、大学ノートで軽く叩いたのは脇田だった。奴はコホンと咳払いをし、俺と西山の首に腕を回してきた。 「重大発表がある」  小声に緊迫感があった。 「このままじゃ、林は袋叩きだ」 「は?」 「お前、鈍感だな。気付けよ、この教室の雰囲気。普段と違う色めき方をしているだろう」 「転校生でも来るってか?」  脇田の腕から逃れ、クラスメートを見渡す。  ん?   何で、どいつもこいつも俺を睨んでんだ。 「殺されそうになったら警察にでも駆け込めよ、親友」  脇田と西山が離れていく。 「なっ! ちょっと待てよ。俺、別に何もしてないだろ」 「はいはい。馬鹿は死んでも直らないっと」  お前らご自慢のハモリなんか、今、必要としてないんだよ。  
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