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高校生活二年目の春。
俺は、いくつもある止まり木に、それでも止まろうとしない有名人様と、同じ教室に押し込められた。潰しがきくと、専らの噂が流れる普通科だ。
向井は二年目の初日から、野郎共に囲まれていた。
俺の周りといえば、脇田聡史と西山昇の二人だけ。
しかし、こいつら、お笑い芸人のようにうるさい。小学校の頃から、テンションが変わらないってのは、貴重な存在なのかもしれない。
俺達は、俗にいう腐れ縁が、ずっと続いている仲である。この天然記念物的な連中がいるおかげで、俺は毎日、楽しくやっている。新参人はいらない。三人で馬鹿をやっていられれば、それでいい。
が、そう思っていたのは、俺だけだったらしい。この馬鹿達は、ゴールデンウィークが終わってすぐに、五月病が治らない頭で、向井を求め出しやがったのだ。
「なあ、俺、あいつが欲しい」
言いだしっぺは、脇田だった。
昼食中に、コロッケバーガーを齧りながら、あいつが食べたいとでも言い出しそうな勢いで、クラスメートと笑い合っている向井を見た。
「お前ねえ、人間はものじゃないんだぞ」
俺は、あんに反対だと、告げてみた。
「競争率たかいと思うよ」
そう言ったのは西山だ。
こちらは、口調とは裏腹に、狩に出る目つきをしていた。
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