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「おい~、やめようぜ。俺達まで新聞部の餌食にされるだろうが」
「いいねえ、俺、あそこの部長、嫌いなんだよ。あの陰険眼鏡オタク」
脇田がバーガーを大口で食らう。
「高村先輩は部活に熱心なだけだろ」
「向井オタクの間違いでしょ、それ」
俺のフォローを蹴散らす友人二人。
脳みそが合体したかのように、口を揃えてしゃべるのが彼らの得意技だ。
「この前、トイレにまで追いかけてきやがったんだぜ」
脇田が俺の飲みかけのトマトジュースを手にする。
「シャッター切ったの?」
西山が脇田からトマトジュースを奪い、俺の手元に戻す。
「そっ。あまりのスピードにチャックも上げられんかったわ」
「向井君狙いでしょ、どうせ。脇田君のなんて、誰がみたいって言うのさ」
西山がピシャリと、突っこみを入れる。
「お前らねえ、向井のだって何に使うんだよ」
呆れる俺に振り向く二人。
「向井君のは需要あると思うよ」
「あいつ、どんだけ告られてんのか、お前、知らねえの?」
俺はトマトジュースを啜り、話をスルーする。
「美少年って感じじゃないけど、なんだろうなあ。気になるっていいますか」
西山がパンを食べきり、ビニール袋を丸める。
「向井って危ういんだわ、見ていて。女じゃないってわかっていても、傍にいてやりたいって思っちゃうから摩訶不思議」
「お前ら、もう合コン組んでも誘わないからな」
「そういう林君が、一番落ちそうだけどね」
西山、申し訳ないが、俺は男の裸で興奮するような兵じゃない。
「俺はね」
脇田がクラスメートの輪の中心にいる、向井に視線を向けた。
「いつか、とんでもないことが起こって、向井のキャパシティーを越えちまうんじゃないかって心配してんのよ、これでも」
そのいつかに巡り合ったのが、よりにもよって俺だった。
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