第一章 1

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「おい~、やめようぜ。俺達まで新聞部の餌食にされるだろうが」 「いいねえ、俺、あそこの部長、嫌いなんだよ。あの陰険眼鏡オタク」  脇田がバーガーを大口で食らう。 「高村先輩は部活に熱心なだけだろ」 「向井オタクの間違いでしょ、それ」  俺のフォローを蹴散らす友人二人。  脳みそが合体したかのように、口を揃えてしゃべるのが彼らの得意技だ。 「この前、トイレにまで追いかけてきやがったんだぜ」  脇田が俺の飲みかけのトマトジュースを手にする。 「シャッター切ったの?」  西山が脇田からトマトジュースを奪い、俺の手元に戻す。 「そっ。あまりのスピードにチャックも上げられんかったわ」 「向井君狙いでしょ、どうせ。脇田君のなんて、誰がみたいって言うのさ」  西山がピシャリと、突っこみを入れる。 「お前らねえ、向井のだって何に使うんだよ」  呆れる俺に振り向く二人。 「向井君のは需要あると思うよ」 「あいつ、どんだけ告られてんのか、お前、知らねえの?」  俺はトマトジュースを啜り、話をスルーする。 「美少年って感じじゃないけど、なんだろうなあ。気になるっていいますか」  西山がパンを食べきり、ビニール袋を丸める。 「向井って危ういんだわ、見ていて。女じゃないってわかっていても、傍にいてやりたいって思っちゃうから摩訶不思議」 「お前ら、もう合コン組んでも誘わないからな」 「そういう林君が、一番落ちそうだけどね」  西山、申し訳ないが、俺は男の裸で興奮するような兵じゃない。 「俺はね」  脇田がクラスメートの輪の中心にいる、向井に視線を向けた。 「いつか、とんでもないことが起こって、向井のキャパシティーを越えちまうんじゃないかって心配してんのよ、これでも」  そのいつかに巡り合ったのが、よりにもよって俺だった。
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