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「担任?」
頭上から降ってきた声に、心臓が飛び出すかと思った。
「へ?」
しまった。声が裏返った。
向井が俺の前の席の椅子を引張りだし、こともあろうか座った。
おい、居座る気じゃねえだろうな。
「それ、担任に押し付けられたんだろ?」
アンケートを指で示される。
「手伝ってやる」
「いや。もうすぐ終わるから、俺一人で」
「一日一善。良い心がけだろ?」
向井は有無を言わさず、アンケート用紙の半分を手にした。
一日一善なんて久しぶりに聞いた。
俺の心の指針になっている言葉。
過去にした古い約束。
溜息をつき、周囲を見回して、誰もいないことを確認する。
集計の仕方を教えようとし、目を見開いた。
「ごめん」
それは、か細くて聞き取れないようなほど小さい声だった。
だけど、確かに、向井は俺に謝ったのだ。
厄日だと思った。
関わりたくない人間に、関わりたいと思うなど、どうかしている。
俺は返答をせず、今度こそ集計の仕方を伝えて、二人で黙々と作業にかかった。
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