消して消えて、消さなかった

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『ごめん…。俺、尊をそういう目では見れない…だって、俺はっ…!』 ゆっくりと目を閉じた彼女は静かに頷いて、俺の手を両手で閉じ込めた。 『ありがとう、れーくん。聞いてもらいたかっただけだよ…ちゃんとわかってる。 れーくん。約束して? れーくんは必ず、必ず幸せになってね。笑って…いつもの優しい笑顔でいてほしい』 それこそ、世界一幸せになって。 そう言って目を開いて俺の姿を捉えた瞳は少し潤んでいて赤く染まろうとしていた。そんな彼女に声を掛けようとしたのに彼女は俺の手を握って背を向ける。彼女に手を引かれながら家路に着く。その間俺はずっとその背中を見ていた。小さいと思っていたそれは確かに自分のものより遥かに小さい。それなのに何故だろう、その日の彼女の背中は何者よりも心強く、温かく、しなやかで…眩しいもので。 『幸せになって。 きっと…きっとだよ。私がいなくても幸せな世界にいてね』 .
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