消して消えて、消さなかった

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『それがねぇ…尊、実家を出た七年前から殆ど帰って来なくてねぇ。高校卒業していつの間にか就職先も決めてて、上司の方も挨拶に来てくれてね。それで家を出てからたまに電話しても折り返し来るのはまだ良い方! 殆ど出なくてね…昔から大人びた静かな子だったし、もう大人だから煩くは言わないけど…ねぇ。 恋一君の結婚式って何回も留守番に残したから知ってるとは思うんだけど』 俺には同い年の従姉がいる。 迷岸 尊、女の子で同じく二十五歳。俺たちの家は離れていたが同い年ということで母親同士が一緒に遊ばせたがり春夏秋冬の大型連休には必ず会っていた。 『あの子、自分のお兄ちゃんお姉ちゃんよりも恋一君にべったりだったわねぇ。一番恋一君の幸せを望んでたはずだから。式に間に合うといいんだけど』 【世界で一番、幸せに…】 高校三年生の春半ば…俺は尊に告白され、断わっている。思えばあの日が彼女に会った最後だった。夏も秋も冬も…迷岸家には行っても尊だけは用事があると留守だったのだ。それを最後に連絡先すら交換していなかった俺たちはすれ違っている。 『尊…元気でしたか?』 『…ええ。仕事のことはあまり教えてくれないけどね、二ヶ月前に電話した時は元気そうだったわ。グローバルな会社みたいでね、英語で誰かと親しそうに話してたわ。あの子ってば英語の成績酷かったのにねぇ…若いって凄いわ。 尊のことは置いておいて、恋一君は今日の式をちゃんと成功させなさい!会社の上司の方とか偉い方も来てるんですって? 期待のエリートは大変ねぇ』 .
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