何度もごめんなさい

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── ─── 私を必死に呼び掛ける愛しい声がする。 私にすがり付き泣きじゃくる小さな身体を抱き締めたい。 ………… だけど私の身体はもう動かない。 あなたが私の為に採って来てくれた華を見てあげたい。 あなたの呼び掛けに応えて、頭を撫でてあげたい。 ── 甘えたなあなたを独りにしたくない。 『ごめんなさい』 もう、目を開ける事も出来ないし何も見えない。 匂いさえ解らない。 口を開き、声を出す事すらできない ……口の中に溜まった液体の鉄の味すら解らない。 身体が痛い筈なのに痛みすら麻痺して解らない。 ─── かろうじてあなたの悲痛な叫びが聞こえるだけ……。 『ごめんなさい』 あなたにもっと色んな事を教えてあげたかった。 『ごめんなさい』 もっとあなたを甘えさせてあげれば良かった。 『ごめんなさい』 あなたを独りぼっちにしてしまう事を許して。 ………… 『ありがとう』 辛いだろうけど側に居て、私の最期を見届けてくれて。 ─── "人間"は怖い生き物だから無闇に近付かないでね。 あなたは私の分も長く生きてちょうだい。 ─── ───── 手向けの華は季節外れの"紫"のヒヤシンス。 西洋花言葉 「I am sorry(ごめんなさい)」 「sorrow(悲しみ、悲哀)」 「please forgive me(許してください)」
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