3人が本棚に入れています
本棚に追加
──
───
私を必死に呼び掛ける愛しい声がする。
私にすがり付き泣きじゃくる小さな身体を抱き締めたい。
………… だけど私の身体はもう動かない。
あなたが私の為に採って来てくれた華を見てあげたい。
あなたの呼び掛けに応えて、頭を撫でてあげたい。
── 甘えたなあなたを独りにしたくない。
『ごめんなさい』
もう、目を開ける事も出来ないし何も見えない。
匂いさえ解らない。
口を開き、声を出す事すらできない
……口の中に溜まった液体の鉄の味すら解らない。
身体が痛い筈なのに痛みすら麻痺して解らない。
─── かろうじてあなたの悲痛な叫びが聞こえるだけ……。
『ごめんなさい』
あなたにもっと色んな事を教えてあげたかった。
『ごめんなさい』
もっとあなたを甘えさせてあげれば良かった。
『ごめんなさい』
あなたを独りぼっちにしてしまう事を許して。
………… 『ありがとう』
辛いだろうけど側に居て、私の最期を見届けてくれて。
─── "人間"は怖い生き物だから無闇に近付かないでね。
あなたは私の分も長く生きてちょうだい。
───
─────
手向けの華は季節外れの"紫"のヒヤシンス。
西洋花言葉
「I am sorry(ごめんなさい)」
「sorrow(悲しみ、悲哀)」
「please forgive me(許してください)」
最初のコメントを投稿しよう!