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気分転換になればと無理やり引きずり出して連れて来てみれば、癒されたのは自分の方だ。
「俺、付き合ってみようかな、高之と」
伸びた後の吐く息と共に気軽に出た思いがけない台詞に、瞬発的に隣りに立つ朝陽を見た。
大人のような、少年のような、濁りの無い眼差しで。
見返してくる瞳に魅入った。
「『人生とは短いのだ。悩むなら行動あるのみよ』って、さっき信長様が言ってた」
フィクションとはいえ、他人の助言がこんなにもありがたく身に染みたことがあっただろうか。
(ありがとうございます、信長様!)
込み上げてくる幸福感に、耐えきれず笑う。
今さっきまでの最悪な気分も後ろめたさも、何のそのだ。
「単純だなあ、朝陽」
「そこも好きなんだろ?もちろん」
清々しく笑う朝陽の顎を軽く持ち上げ、間髪入れずについばむようにキスをした。
「お前手ぇ早っ!」
真っ赤になって朝陽は片手で口元を覆う。
「ごめん、我慢出来なかった」
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