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ランチタイムのピークが近付いている。
いつまでもぐずぐずと泣き寝入ったとて将来は必ずやってくるのだ。
「行けよシェフ」
見返りも介在せずに甘えられる存在なんてごく僅かに限られていて、新たに手に入るものでは有り得ない。
失うのは一秒でも可能だが、だからこそ尊ぶべきだと思い知らなければならないと痛切に感じる。
「好きだよ」
「気持ち悪い」
朝陽と瓜二つでなくて良かった。
薄気味悪い告白に顔を歪めて笑って、高之は昇に手を差し伸べる。
落ち込んでいるのを良いことに、いつまでも休憩しようとするシェフの尻を叩いた。
『陽炎に揺らぐ〈不協和音〉』END
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