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真っ青な空に、真っ白な雲の塊が腰を据えている。
「すごい入道雲……」
アグレアーブルに向かう道で、沙羅は強い日差しに片手で日避けを作って空を見上げた。
砂利の駐車場を横切って裏口のドアノブに手をかけるが、まだ鍵が掛かっていた。
今住んでいるアパートにエアコンは無い。耐えられない程ではないし扇風機で充分だったと思った矢先に朝から三十度を超える予報がやってきてしまって、少し早く出勤して店内で涼もうと思ったのだ。
「暑いよー早く誰か来て」
この時間ではまだ狭すぎる日陰に身を寄せて座り込み、早朝からジリジリと肌を焦がす太陽を見上げた。
駐車場から砂利を踏んで誰かが歩いてくる音がする。
「早えーなお前、暑かったんだろ。だから中古でいいなら買おうかって言ったのに」
「勿体ないじゃん。もう少しで借金返済出来んだよ」
派手なアーティストTシャツにダメージデニムで、幾つもの鍵の音を鳴らしながら昇がドアの前に立った。
「開けたってすぐ涼しくなんてなんねえぞ」
「うちよりマシ、早く!」
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