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店内はフロアにさんさんと直射日光が入り込み、蒸し風呂のようだった。
「あーあ、ロールカーテン下ろして帰れっつったのに忘れたな高之のやつ。頼んでいい?」
「イエッサー」
猛烈な速さで全てのロールカーテンを下ろして戻ってくると、タイムカードを押しに行き、そのままロッカーへ直行しようと小走りでキッチンを通過する。
「待って待って。どうせ時間外だからまだ休もうぜ」
冷房をつけて業務用冷蔵庫の冷凍から、昇は買い置きしておいたアイスバーの箱を覗く。
「イチゴかレモンかオレンジかマスカット、どれがいい?」
「メロン」
「無えよ。言ってねえしメロン」
一番残っていたオレンジを適当に渡して、昇はカウンターに寄り掛かって自分のマスカットの個包装を開けた。
「オレンジ美味しい」
「そりゃ良かったな」
隣で同じ角度でカウンターに寄り掛かる沙羅はシャリシャリと軽快な音を立ててアイスを砕いた。
正式に付き合い始めて一ヶ月になる。
抱きつき癖とたまに沙羅から軽いキスを求める以外は特に進展もなく、平穏な恋愛だ。
「良ければうちに寝に来る?」
「え、嘘?!昇、そーゆー覚悟出来たの?」
一瞬ドキリとした。
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