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「……本気?」
「冗談で言わねえし。昇に借りた分払い終わったらこのまま働いて来年度から夜間で通える学校行こうかなって」
昇も食べ終えた棒をゴミ箱に捨てて、そのまま佇んだ。
パティシエはそもそも資格を取らずとも、店で経験を積めば菓子職人として成立する仕事なのだ。
「製菓衛生師か菓子製造技能士持ってたらここの為になるかなって考えてんだけど……やっぱり笑う?」
「いやいやいや!すげえなって思ってたとこ」
高度な技術は昇もイチも持っていない。
店で出せるレベルのものを作れるのと、パティシエの技術を持って作る本格スイーツでは格差がある。
昇も身一つで見習いから下積みをして、正しい知識と必要な資格を身につけたくて後から学校にも通ったが、一般的な製菓以外は専門外だ。
イチもそれは同じで、唯一製菓専門の学校を卒業した葛西はパン職人なのだし、ここで沙羅がパティシエを目指したいと言うのは思いがけない開拓に繋がる話だった。
「若いうちに詰め込んでおきたいじゃん」
「マジか、尊敬する……」
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