陽炎に揺らぐ〈遠雷〉

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恩も返したいが、イチや昇が作らないようなスイーツを自分の手で作れたらと、見返したい気持ちもあった。 「卒業して二十歳になったら正式にパティシエとして雇ってくれる?安い給料でいいから」 「歓迎するよ」 若さゆえとは言え貪欲に前に進む姿と、毎回驚かされる行動力は、昇の原動力にも成っていた。 沙羅の顔を両手で包み込み上向かせてキスをする。 「アイス食ってたから冷てぇな」 「皆来ちゃう前に、もうちょっとしようよ」 沙羅は手を繋いで誘う。 要求に応えた昇の巧みな舌先の動きが、背筋に甘い痺れを走らせた。 「んん……っ?!」 優しいキスというより、あたかも性的な行為を想起させられ、散々今まで慣れた素振りを見せて来た沙羅は紅潮して唇を指先で塞いだ。 「昇のキス……やらしい!」 「さくらんぼの茎、口ん中で結ぶの得意なんだよね。俺」 降参させておいて、昇は悪戯っぽくチロリと舌を出した。
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