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ほんの数年前までは、毎日のようにどちらかの家でテレビゲームを夜中までしたり、自転車で数時間かかる遠くの人気ラーメン店まで行ったり、プラモ作りに数日共同制作したりしたものだ。
でもそれはまだ、高之も学生だったからだ。
たまにしか遊ばなくなった頃には、朝陽は大学生に。
二十六歳の高之は、長身にモテそうな容姿。
両親は仕事で海外生活していてマンションには一人暮らし。服装のセンスさえ悪くない。
おまけに女は取っかえ引っ変え。同性から改めて見れば嫌味な奴だと思う。
「……この間の彼女はどうしたんだよ?映画に行くならそういう相手だろ」
煙草を消す長くしなやかな指を睨みつけながら、思い出した事を聞いた。
大学からの帰りエレベーターから降りた矢先に、彼女を支えるように部屋に入る高之と遭遇してしまったのだ。
気まずいにも程がある。
「あー、あれは上司」
「上司をお持ち帰りかよ。ご大層だな」
「酔いつぶれたんだよ。お前、やけにつっかかるな」
「…………」
嫌な間だ。まるで嫉妬で、その彼女の素性を話せと強要したようだ。
数日前。
この男は家に辞書を借りに行ったその時、肩を掴み壁に押しつけて『好きだ』と言った。
よく漫画なんかでは良い雰囲気になる所だが、瞬時には憤りしかなかった。
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