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フィルが無言で立ち止まる。右側にあるドアに肩で押し開け入るようだ。腕を掴まれたレオはついて行くしかない。
「……った」
ドアが閉まった途端両腕をきつく掴まれ、壁に押し付けられた。見えるのは目の前のフィル。
「腹が立つ。お前は思い通りにいかない」
言われた意味が全く理解不能なレオはきょとんとした顔で瞬きしてフィルを見上げた。
「俺を困らせるばかりのお前は何なんだ。農民だろうが頭がいい。大人顔負けの冷静さと順応性。言えばキリがない。レオ、お前は何者だ。この大陸の人間なのか?俺は、お前がつかめない。底が見えない。正直時々恐ろしい」
「……ぇ」
なに?俺、否定されてる?
真顔で急に何言ってんの?
レオは一気に不安に包まれた。弱っていたメンタルが侵食され目が涙で滲む。
「レオのような人間は初めてだ。俺の心を掻き乱すのはレオだけだ。腹が立つ上に可愛くて愛おしい。俺のレオ。俺の執事。側から離れるな。俺の側で生きればいい」
お、俺、何て言えばいい?
反応に困ったレオは、真顔のアンフィルに向かい、ぽかーんと口を開けて固まっていた。
フッと微笑を浮かべるのはいつもの柔和なフィルだった。
「レオ。変な顔だな」
「……ふぁっ?」
「ははっ、怪我は直して貰ったな?俺もそろそろ腹を括るか。城跡に行くぞ」
「え?」
ぜ、全然わかんないんだけど??
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