これでおしまい

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長い付き合いの医術師から見ても気紛れだと思うか。否定はしない。何故か気になり連れ帰った。クッと笑っては見たが、これは手がかかるだろう。 歳はやはり十代前半か。髪はボサボサで長い。汚れを拭きあげると薄いブロンドになった。頬は痩けているが顔立ちは悪くない少年だな。昏々と眠り続けている。 この子は生きたいだろうか。もう生きたくないのかも知れない。助けたら後が辛いだろうか。 俺はどうする気だ。いや、自分の気紛れは毎度の事だ。ベッドに横たわる痩せた子供を見て、今後の事に思いを馳せた。 客間を子供専用にした。大小の柔らかいクッションを揃えてみた。適度に体位を変えてやる。定刻を決め、舌と喉を刺激して反射を促す。砂糖水を口に浸して摂らせてみた。無意識でも少しずつ嚥下してホッとした。昏睡というより深い眠りの様だ。 下の世話は暫く食べてないからか出るものも無かった。医術師が脱水で腎不全起こすとか、専門的な事をクドクド語ったが理解不能だった。とにかく水分を増やせと言う。果実水と塩水を追加した。 「飲めたか。偉いな」 身体を抱え起こし刺激を与えた。布に浸した水分を繰り返し口にやる。時々ちゅうと吸う。それを根気よく続けた。 三日目。少年はまだ眠り続けるが、ごく稀に「ん」などと発したり、ピクリと動く様になった。 「頑張る子だね。良くなってる」     
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