1273人が本棚に入れています
本棚に追加
/297ページ
少年が覚醒したのは四日目の事だった。また眠ったな。身体が動かせ無いんだろう。肩が浮く。寝返りがしたいのかと手伝って向きを変え、クッションを挟んでやる。ルースが誂え揃えた物を着せると見違えて小綺麗になった。健康であれば、さぞや秀麗な子なんだろう。
フィルは少年を見つめた。開いた目は澄んだベビーブルーだった。声も耳に心地良く感じた。
「ふ…何だ。この楽しい気分は」
こんな気分は何年振りだろう。また柔らかい声を聞きたい。俺の名を呼んで貰いたい。どんな表情を見せるのか。どんな…。
「はは、新しい玩具を貰った子供の気分だ」
フィルは首筋に残る飲みこぼした果実水を布で拭った。
朝鳥が鳴いてる。朝だ。目が開いた。よく寝た。
「この、部屋…」
俺の部屋?と、起きようとしてギョッとした。見えた腕は細い。力を込めなんとか起きてみる。全身が骨張っていた。脱力感が凄いな。腕を突っ張り何とか起坐位を保つ。腕が震えた。
この身体知ってる。髪も伸びっぱなしで汚れてたのに、サラサラと流れ顔を撫でた。身体もいい匂いがする。寝衣も高額な絹を着てるし。そしてここは広い部屋のベッドの上。もう体重を支えるのは腕が限界だった。そのまま後ろに倒れる。
ガチャン!
倒れた拍子に横にあったスツールが揺れたのか、何かが落ちた。
震える手で痩せこけた頬に手を置いた。餓死して転生したと思ったのに生きてる。
「死んで、ない…」
最初のコメントを投稿しよう!