これでおしまい

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これでおしまい

何日食べてないんだろう。 泥水は飲んだっけ。もう動きたくない。 「何だこのガキ。臭ぇ」 「邪魔だ。あっち行ってろ!」 「ぐっ」 道端に転がってたら蹴られた。 「ははっ、逆に靴がよごれらぁ」 ゴッて音がした。石壁かな。どこかに当たったな。感覚も鈍いか。ズキズキはしてる。 は…ぁ…いってぇ。 気力を振り絞る。穴が開いた壁に這って入る。腕を使い少しずつ這う。入った所は空き家の庭か。人の気配は無いな。ホッとした。立つ体力もない。このままじゃ確実に餓死だなあ。 教会で貰った服もボロだ。野宿してたら汚れて破れた。自分でも汚いと思う。不景気と寄付不足で配給が止まった。もう何も得られない。痛いし怠いし瞼が重たい。動きたくない。動けないや。これ死ぬかも。 この世界良く知らないのに勿体ない。まだ農民しかしてない。前世は幸せだった。今世はこれで終わりか。次転生する時は王子とか成金とかいいな。裕福な生まれがいいな。ああ、日本にも帰りたい。久々に人じゃ無くてもいい。野の花でいい。 眠気なのか末期なのか朦朧としてきた。 もう、俺、眠ろう。  覚えてるのはそこまでだった。     
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