疑惑と距離

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「あー!」 「か、かわいい!」 「なんと雪月花の君が」 「あらら、可愛らしい」 「あーマズイ。泣くとは予定外だぞ」 「…大公が怒るぞコレ、マズイ、マズイぞ」 騒めく会場で呆然と一歩も動けず涙するレオにフィルは急いで駆け寄り抱き締めた。 「レオ、レオ、泣くな」 フィルだ。フィルがいる。慣れた香りと温もりに包まれて全身の力が抜けて来る。レオもフィルの腰に手をまわして抱き付いた。 「大丈夫か。驚いたんだろ?済まなかった、俺も知らなかったんだ。嫌疑は口実だ。嘘だぞ。これはレオの執事就任パーティだ」 何言ってんの?確かにパーティだろうけど何で俺の就任? ゆっくり顔を上げると、フィルもまた優しい目でレオを見降ろしていた。 「…なんで」 「顔見せを兼ねた貴族の執事継承晩餐会が伝統だった。レオを選んで貴族間が微妙で行事もやめたんだ。もう執事独り立ちして五年だろ。周りが煩かったのは事実だがレオは立派に仕事をこなす事で認められたんだ。バカ息子が画策し皆を呼び寄せこの騒ぎだ。不安だったろ、悪かった」 「俺はもうとっくにフィルの執事だ」 「そうだ。これからも俺の執事だな」 フィルは屈んで涙の後にキスをした。
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