作家を語る・作家と語る。そして、作家への道

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№1 この手紙があなたに届くことはないだろう。 「前世や来世の自分へのメッセージを受け付けます」だなんて、単なるイベントであり、お遊びの一環だということぐらい、馬鹿でも分かる。  それでも、書かずにいられなかった。  聞かずにはいられなかった。  それ程までに、俺は今、切羽詰まっている。  あなた……  いや、あんた。  その時代で一体、どんな風に生きていたんだ?  女を泣かせ。  男には恨まれ。  相当な悪行を積まなければ、生まれ変わった俺が、こんなにも酷い状況になる筈がない。  親に嫌われ。  女に騙され。  友人すら出来ず。  それでもまっとうに生きて来たし、誰かを恨むことも無かったが、俺はあんただけには言ってやりたい。  あんた、一度人生をやり直した方がいい。  ……あ。  違うか。  あんたの人生のやり直しが今の俺なのか。  なんだか理不尽だな。  とにかく。  あんた。  今からでも遅くはない。  少しは善行しろ!  一度でいいから!    前世の自分へ。  現世の自分より。
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