作家を語る・作家と語る。そして、作家への道

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№8  風のように去っていった君へ  夕暮れ時になると、いつも貴女を思い出します。  数年前、部活の帰り道。  ジャージ姿で呑気に歩く私の前方から、凛とした姿で歩いて来る貴女。  汗臭い自分とは違い、いい香りが漂う貴女とすれ違う瞬間、私は何をされたのか分かりませんでした。  まさか、私の手首を貴女が掴み、自分の胸に私の手を押し当てるなんてこと、一体誰が想像するでしょうか。  混乱している間に、下半身に感じた違和感。  貴女の細くしなやかな指先が私の股間へと伸びた時、貴女は叫びましたね。  私の股間にあるべきはずのものが無いと。  いいえ。  それは違います。  いくら私がボーイッシュでも。  いくら私の胸がペチャンコでも。  私はまごう事無き女なのですから。  顔を真っ赤にして走り去った貴女のお陰で、私は女としてのプライドが傷つけられましたが、今では感謝しています。  女らしくなるキッカケを与えてくれて、ありがとう。                      風の中に置き去りにされた者より
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