40人が本棚に入れています
本棚に追加
「こっちを見て」
そう言われると見ない訳にはいかない。
今はそういう時間だからだ。大人になる段階で、自分を使い分ける方法は身につけた、つもりだ。
透子はゆっくりと視線を運び、颯太の瞳の奥をのぞき込む。
颯太もまた、それに応えるように透子の瞳を追うのだ。そして、いつもはっとする。
透き通っていて美しいのに、感情が凪いだようなその瞳は、思わず息を飲むほどに冷たく揺れている。まるでこちらなど見ていないように。
それでも、目をそらしてはいけない。彼もまた、自分を使い分ける方法はよく知っている。
最初のコメントを投稿しよう!