【1】美しき片想い

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徐々に晴れていく頭、シクシクと泣き声が聞こえてくる。 「先生…痛いです…。」 「我慢して下さい。 今保健の先生が来ますから…。」 「でも血が…、」 「大丈夫ですよ。 それ位の擦り傷なら大した事ありません。」 カーテンで仕切られているから誰だかわからないけど、どうやら転んだ生徒とそれに付き添っている先生のようだ。 私は退屈凌ぎに二人の話を聞いていた。 「もう保健の先生はいいから先生が手当てしてよ。 肘とか自分じゃできないし…。」 「僕がですか?」 「そう、先生がやってよ…。 もう血とか見てらんない…。」 「わかりました…。 ですが綺麗にできなくても後で文句言わないで下さいよ。」 「はーい。」 二人のやり取りが何だか可笑しくて、私は一人でこそこそと笑っていた。 .
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