【1】美しき片想い

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私はサッと翔ちゃんに気付かれないように廊下の端に身を隠す。 どうして翔ちゃんがここに? 4年ぶりだった。 翔ちゃんはいつだってカッコ良くて王子様みたいで…。 涙がジワリと浮かんでくる。 スーツを着た翔ちゃんは、あの頃よりも大人っぽく見える。 凛々しく背筋を伸ばして歩く姿は、やっぱり私には遠い存在で、いつだって私が追い付けない所にいるような気がして、手を伸ばしても届かない。 こんなに近くにいるのにね…。 私は翔ちゃんが帰って来た理由がこれだったんだと知った。 教師になったんだ…。 ドクンドクンと弾ける胸を落ち着かせるように呼吸を整える。 そして翔ちゃんと連れの先生が見えなくなるのを待って、私もようやく歩き出した。 職員室とは正反対の方向へ。 鍵は明日返せばいい。 新学期が始まればもう避ける事ができない状況で、まだ戸惑うばかりの私だけど、 今だけは…。 「さようなら。」 その時風がふわりと通り過ぎるように、宇佐美先生とすれ違った。 .
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