最愛なるあなたへ

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 お元気ですか。  あれから十年の月日が流れました。  あなたが居なくなった日は雨だったと聞いています。冬の雨は大変に冷たかったでしょうね。  やっと出てこられるというのに、奇しくもその日は雨の予報です。  あなたが罪を犯した事は、決して許される事ではありませんが、それが私達を守るためだったとしたら、もう充分に贖罪は果たせたと思います。  あの頃の私なら、何も出来ずに抱かれて愛されていただけでしたね。あなたはよく頬に口付けて私を恥ずかしくさせました。  けれど今はもう一人で歩けるし、考えたり行動したりと一人前です。  やはりその日は雨の予報ですが、早くその日にならないかと期待してやみません。  私はあなたに会えたら、初めまして、愛してますと言います。そして、成長した私に驚いて下さい。  父さん、お務め、ご苦労様でした。  __ 娘より
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