魔法使いの呟き

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「え、勇者様ですか!?」 違う違う。 「俺は魔法使いですよ」 「あ、そうなんですか……」 否定するといつもこんながっかりした顔で見られる。 なんだよ、魔法使いが男じゃ悪いのか。 そもそも、勇者御一行の中に魔法使いがいちゃいけないとでも言うのか。 確かに、魔法使いは強力な魔法をがんがん使える分、他の役職の人よりも防御する力も、体力も弱い。 魔法が効くモンスターも、限られているのかもしれない。 それでいけば、回復も攻撃もできる僧侶の方がいいんだろうけどさ。 思わず溜め息がでる。 前の雇い主は、僧侶が入ったから、俺のことはもういらないと告げた。 この勇者は、どうなんだろうか。 俺の雇い主は国だ。 いらなくなっても、解雇するわけにはいかない。 僧侶のレベルが上がったら、俺はずっと馬車の中か。 好きで魔法使いになったのはなったけど、こんなに生きづらい世の中だとは思わなかったよ。 「うわあああ、モンスターだ!!」 悲鳴が聞こえてきて、身体が自然とそっちへと向かっていく。 俺がいったところで、なんの解決にもならない。 ならないけどさ。 それでも足止めくらいにはなるだろ。 「メガファイア!」 巨大なオークに向かって魔法を唱える。 火の柱がオークの足元から上がるが、やっぱりあんまり効いてない。 オークがにたにたと気持ち悪い笑みを浮かべて俺を見ている。 そうして振り上げられたこん棒に、あ、これ死んだわ、なんて思いながら、 さっき襲われていた村人が逃げていくのを横目に見えて、満足感が広がる。 これでも勇者御一行の一人なんで、神様ってのが勝手に生き返らせてくれるし、いっか。 言い表しようのない痛みが襲って、俺は闇に飲まれた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!