170人が本棚に入れています
本棚に追加
/599ページ
『もうすぐ春が来るね、桜見れるかな?』
『桜か……そうだな、見れるといいな』
『この辺りは桜の木がいっぱいだから、きっと綺麗だよ 』
春の訪れがすぐ近くまでやってきている、二人で野営の焚き火の前で肩を寄せ合い、桜が咲いたら一緒に見に行こうと約束した。
彼らと過ごした時間は短くても、彼らの生き様は私にとってかけがえのないものであり、一生忘れられないものになった。
【勝てば官軍】
そんな言葉を聞いた事がある、歴史は勝者によって作り上げられ、そして敗者は歴史の闇に葬られてしまう。
彼らの事をゲリラ隊だ犯罪者だと言う人は沢山いる、だけど私は彼らが正義と信じ生きて来た道を否定する事は出来ない。
彼らがいたから今の私達の時代があるのだから……
「……」
部屋に朝日が差し込み、鳥の声で目が覚めた。
「また、あの夢?」
私は何故か羽織袴姿で、周りには軍服姿の男達が沢山いる、山の中で野営をしていて、冬の寒さに耐えながら焚き火の前で、一人の男性に寄り添っていた。
幸せそうに微笑んでいる自分は、その男性の事が好きなのだろう。
ハッキリした事はわからない、時間が経つと忘れてしまうのも夢だから。
だけど、最近同じ夢ばかり見る……あの、男性は誰なのだろうと気になっていた。
「いけない!約束の時間に遅れちゃう!」
椿は慌てて、出掛ける準備をして家を飛び出した。
最初のコメントを投稿しよう!