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「俺、江戸に着いたらあのやろうに一言文句言ってやるんだ!」
「あのやろうって志渡さんの事か?今は金輪五郎だったな……」
岩屋は呆れた顔で大樹を見ていた。
「ああ、あいつ俺が小さいからって、『自分よりデカくなったら、一緒に連れて行ってやる』とか偉そうに言いやがって!今ならそんな台詞言わせない!」
「金輪さんをあいつ呼ばわり出来るのはお前くらいだぞ大樹」
「デカくなったもんな……今幾つくらいだ?」
荒井が見上げる程の背丈の大樹は胸を張り自慢げに言う。
「六尺だ!大抵の奴には負けねぇぜ」
大樹と金輪が最後に別れたのは六年前、大樹がまだ十三歳の時だった。
相楽がまだ小島四郎、変名を村上四郎と名乗って秋田に来た時、まだ幼かった大樹は相楽に剣の才能を認められるも、その若さから共に行動する事を許されなかった。
おいてけぼりにされた大樹は時が来たら即戦力になれるよう、ひたすら剣術の鍛錬に励んでいた。
六尺と言うと、現代に直すと約180センチ、江戸時代の平均身長が150~155センチの時代、大樹はかなりの大男だった。
大男と言っても、大樹は線が細く長い髪を頭の高い位置に束ね、整った顔立ちはまるで牛若丸の様な容姿、その上男なのに色気がある、だから女は勿論、男からも言い寄られる事は多々あった。
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